オフセット印刷とは?印刷の仕組みとメリット・デメリットについて
2024.05.22 2020.01.20印刷・デザインDMなどの印刷物を作成する際、「じゃあ、これはオフセット印刷でいこう」といっている人を見たことがあると思います。この記事では「あの…オフセット印刷ってなんですか?」と聞きたいけれど聞けない方のために、オフセット印刷の名前の由来、印刷の仕方、向いているものいないものなど、さまざまな角度からオフセット印刷についてご説明します。
目次
オフセット印刷とは?
オフセット印刷とは、「版」を使って印刷する方法です。子供の頃、サツマイモに彫刻刀で文字やイラストを彫って「イモ版」を作ったことがある方は多いでしょう。イモ版が1個あれば、何十枚もの紙にハンコが押せましたよね。ざっくりいうとそういうイメージです。
オフセット印刷とイモ版の違うところは、オフセット印刷は平らな版を使う点です。平らな版についたインキをブランケットと呼ばれる樹脂やゴム製の転写ローラーにいったん写し(OFF)、そのブランケットを介して用紙に転写(SET)します。版と用紙が直接触れない印刷方式から「オフセット」と呼ばれるようになりました。
オフセット印刷の最初の実用例は1875年、アメリカ人のロバート・バークレーによって発明されたブリキ印刷だといわれています。紙へのオフセット印刷はアメリカで石版印刷の工場を経営していたアメリカ人のアイラ・ルーベルによって、1905年に発見・完成されました。その発見は偶然の産物で、工場で作業員が誤って紙を補給しないまま印刷機を運転し、紙を通してしまったことがきっかけといわれています。裏と表の両面に印刷された文字を見ると、裏面に印刷されていた文字は反転していたものの、正しく印刷された表面よりもきれいに仕上がっていたそうです。ルーベルはこの出来事をヒントに、ブランケットと呼ばれる中間シリンダーに転移させてから紙に印刷するオフセット印刷を完成させました。
オフセット印刷とオンデマンド印刷の違い
昔は印刷といえばオフセット印刷が主流でしたが、最近は「オンデマンド印刷」という言葉もよく耳にするようになりました。オフセット印刷とオンデマンド印刷の違いは「版」を使うか使わないかという点です。オフセット印刷が版を使うのに対し、オンデマンド印刷は版を使わず印刷データをパソコンから直接プリンターに送信します。レーザー方式やインクジェット方式などを利用した、高速デジタルプリンターを使った印刷方法です。「オンデマンド」には、「必要なものを、必要なだけ、必要なときに」という意味があります。
詳しくは以下をご覧ください。
オフセット印刷のメリット・デメリット
メリット
- 版を使うので、同じものを同じクオリティで大量に印刷できる。
- 大ロットの印刷ならコストを抑えることができる。
- 顔料油性インクを使用しているのでインクのノリがよく仕上がりが美しい。
- イラストや写真、文字などの細かいところまで表現できる。
- 大きいサイズの印刷もできる。
- さまざまな種類の用紙を使用することができる。
- 多色印刷ができる。
デメリット
- 版をつくる作業が必要なため、納期が長くなりやすい。
- 版をつくるのに費用がかかるため、小ロットの印刷ではコストがかさむ。
- 大ロットでも、内容が少しずつ違う印刷物だと同じ版を使えないためコスト高になる。
オフセット印刷の主な印刷方式
オフセット印刷は版が用紙に直接触れることがないため、版胴の摩耗を最小限に抑えることができ、これにより鮮明な印刷が可能になります。印刷の仕方は次の通りです。
- 胴版に版をまきつけ、水、インキがのせられます。
- 版とブランケットが接触してインキが転写されます。
- ブランケットに転写されたインキが用紙に印刷されます。
オフセット印刷の用語
版
印刷に使用する版。表面に感光剤が塗布され、感光すると親水性と親油性に分かれるように加工されています。版はCTP版、樹脂凸版、水なし平版の3種類があり、印刷物によって使い分けられています。
CTP版はパソコン上のデータを直接アルミニウム版に焼き付けて作成します。樹脂凸版はスチールベースに塗布された感光性樹脂にネガフィルムを重ね現像してつくられます。水なし平版は印刷しない部分がインクを反発するシリコン層でつくられています。現在主に使用されているのはCTP版です。
版胴
版をとりつけるローラー。取り付けた版に水ローラーとインキローラーを介して印刷面にインキがつきます。
ブランケット胴
ゴム製のブランケットをまきつけたローラー。このブランケット胴に版のインキを転写し、さらに用紙に転写します。
圧胴
用紙をブランケット胴に密着させるためのローラー。機械によっては圧胴ではなくブランケット胴が上下2つになっていて、一度に両面印刷ができるものもあります。
水ローラー
版に水をつけるためのローラーです。
インキローラー
版にインキをつけるためのローラー。機械の内部でインキを練るための「練りローラー」や、インキを版につけるための「着けローラー」などに分かれています。インキの種類はペースト状や液状などがあります。
オフセット印刷の主な流れ
オフセット印刷の主な流れは下記になります。
1.データ入稿
デザインデータを作成して印刷会社に渡します。
2.データチェック、印刷データ変換作業
データに間違いがないか、希望通りに印刷できるかなどをチェックします。Officeデータで作成されている場合はPDFファイルに変換します。
3.製版・下版・刷版作業
印刷するための版をつくることを「製版」といいます。データを印刷会社に渡した後間違い(日付や値段など)に気づいた場合、修正できるのはこの時点までです。その後、完成した製版フィルムを次の製版工程にまわして印刷工程に下ろすことを「下版」といいます。下版すると実際に紙に印刷するための「刷版」ができます。刷版は主に「CMYKの4色分の版」のことを指します。
4.印刷
専用の機械で印刷します。代表的なものでは、断裁された紙を1枚ずつ印刷していく「松葉印刷機」、ロール状の用紙を一気に印刷する「輪転印刷機」が挙げられます。松葉印刷機は紙の大きさが自由に選べるというメリットがあり、輪転印刷機は機械上でインキの乾燥から用紙の折り・断裁まで行えるので、生産性に優れているというメリットがあります。
オフセット印刷に向いているものと向いていないもの
向いているもの
カラーイラストや写真が多いもの
オフセット印刷は仕上がりが美しいという特長があるので、イラストや写真を多用したカタログやポスター、雑誌などの印刷にぴったりです。
名刺やハガキ
名刺やハガキは大量に印刷する場合が多いもの。めやすとして名刺なら200枚以上、はがきなら100枚以上必要であればオフセット印刷を選ぶとコストが抑えらます。
向いていないもの
スケジュールに余裕がないもの
オフセット印刷は版をつくる時間を要します。急に企画が決まって、急いで納品したいものなど、スケジュールに余裕がない場合は避けた方がよいでしょう。
特定の地域に配布するもの
限られた地域だけにチラシを配りたいなど部数があまり必要でない場合、オフセット印刷にするとコスト高になるのでオススメしません。
顧客に合わせてパーソナライズしたいもの
たとえばDMなどで顧客の好みや年齢などに合わせて一部分だけ内容を変えたい場合、オイチから版をつくらないといけないので、その分費用がかさみます。
おわりに
オフセット印刷は印刷物の仕上がりにこだわりたいときや、スケジュールにある程度余裕があるとき、大ロットの印刷をしたいときなどにオススメの印刷方法です。納期や費用の面から検討して、よりよりDMづくりに役立ててください。
教えて!DM先生 編集部
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