オンデマンド印刷とは?印刷の仕組みとメリット・デメリットをわかりやすく解説
2024.06.10 2022.10.28印刷・デザイン最近よく耳にする「オンデマンド印刷」という言葉。オフセット印刷より早いとか、便利とかいろいろな噂を聞くけれど、実際のところはどうなのかしっかりと理解しているとは言い難い…。そんなあなたにぜひ読んでいただきたい、オンデマンド印刷のことがよくわかる記事です。
目次
オンデマンド印刷とは?
オンデマンドとは、On Demand=必要に応じてという意味。オンデマンド印刷は「必要なものを、必要なときに、必要な量だけ」印刷できる方法です。簡単にいうと、家庭や会社のプリンターで必要な書類を必要なときに、ササッとプリントするようなイメージです。
従来の印刷方法である「オフセット印刷」が高価(1〜2億円くらい)で大きな印刷機を用いるのに対し、オンデマンド印刷では500万〜1000万円くらいでコンパクトなプリンターを使用するため、印刷会社にとっては設備コストを抑えることができるメリットがあります。
オンデマンド印刷の歴史は1990年代後半に米国ゼロックス社が発売した「Docu Tech」から始まったとされています。現在はコニカミノルタ、リコー、キヤノンも参入し、市場は拡大しています。
オンデマンド印刷とオフセット印刷の違い
オンデマンド印刷とオフセット印刷の大きな違いは「版」を使うか使わないかという点です。版とは印刷したいものを用紙に転写するに必要なもので、簡単にいうとハンコのようなものです。印刷したい文字やイラストの版をつくり、インクをつけて用紙に転写するのがオフセット印刷。版をつくらずに、データをそのままプリンターに送って印刷するのがオンデマンド印刷です。
オフセット印刷は版をつくりさえすれば、何百枚でも何千枚でも同じものを印刷できるので、印刷枚数が多ければ多いほどコストは下がります。ただし版をつくる費用や時間がかかります。オンデマンド印刷は版をつくらなくていいため、少部数の印刷に非常に適しています。ただし印刷枚数が多い場合はコストがかさみます。詳しくは以下をご覧ください。
オンデマンド印刷のメリット・デメリット
メリット
- 版をつくったりインクを乾かしたりする時間が不要なので、納期が短い。
- 10部や100部などの小部数の印刷ができる。
- デザインや内容などの変更に柔軟に対応できる。
- 必要なときに発注すればいいので、印刷物の在庫をかかえる必要がない。
デメリット
- オフセット印刷と比べると緻密なデザインや小さな文字の再現性が劣る。
- 特色や金銀、蛍光色などを使用できない。
- 使用できる用紙のサイズに制限がある(A3程度まで)。
- 大ロット印刷では単価が高くなる。
オンデマンド印刷のやり方
オンデマンド印刷の方式としては「レーザー式」と「インクジェット式」が主流になっています。
「レーザー式」とは?
用紙にトナーを転写させる感光体にレーザーを照射することで印刷します。「感光ドラム、レーザー、トナー」を使用。感光ドラムという「磁石」と、「砂鉄」のようなトナーを使うことによって、版がなくても印刷できます。
仕組み
静電気が蓄えられた感光ドラムに、印刷される形に沿ってレーザー光線が当てられます。レーザー光線が当たった部分は静電気が弱くなり、表面は一時的に「ハンコ」のような状態になり、そこにトナーがついて用紙に転写されます。
レーザー式のメリット
1つのトナーで、インクジェットに比べて約25倍の量の用紙に印刷できます。文字印刷のスピードもインクジェットよりも速いので、印刷コストが抑えられます。
「インクジェット式とは?」
インクに圧力や熱を加えて霧状にし、直接用紙に噴き付けて印刷します。「インクを霧状にするための装置、インク」を使用。印刷するデータと同じように、用紙にカラースプレーを吹き付けることによって、版がなくても印刷できます。インクを霧状にする装置は、ピエゾ方式とサーマル方式の2種類あります。
ピエゾ方式の仕組み
電圧によって体積が変化する「圧電素子(ピエゾ素子)」という物質がインクタンク内にセットされ、圧電素子に電気が流れることで形状が変化し、インクを押し出して用紙に噴き付けます。
サーマル方式の仕組み
インクタンク横に設置されたヒーターが急速に加熱されることで気泡が発生。その空気圧を使用してインクを霧状にして用紙に噴き付けます。
インクジェット式のメリット
解像度が高く、色の再現性に優れています。
参照:互換・リサイクルのプリンターインク、トナーカートリッジの専門通販サイト ‐ インク革命.COM
オンデマンド印刷の入稿から印刷までの流れ
1.データ入稿
修正の必要がない「完全データ」にして入稿するのが基本です。印刷会社に渡す前に、間違いがないよう自社で入念にチェックしておきましょう。
2.データチェック
データに間違いや不備がないか、印刷会社でもチェックします。万一修正点があれば、早めに連絡を。版がないのでつくりなおす工程がないため、オフセット印刷より柔軟に対応してくれます。
3.印刷
データをプリンターに送って印刷します。インクを乾かす時間を要さないため、印刷が終了したらすぐに納品可能です。
オンデマンド印刷に向いているものと向いていないもの
向いているもの
納期が短いもの
印刷会社にデータを送るだけで印刷できるので、急に作成が決まったものやスケジュールに余裕がないものでも対応可できます。
小部数の印刷
1部でも印刷できるのがオンデマンド印刷の強みです。たとえば部数が限られているノベルティにはオンデマンド印刷が向いているといえます。
バリアブル印刷したいもの
誕生日用のDMに顧客の名前を入れたり、顧客の属性に合わせてキャンペーンの内容を少しずつ変えたりしたい場合などに便利なバリアブル印刷は、オンデマンド印刷だからできることです。
「バリアブル印刷」について詳しくは以下をご覧ください。
向いていないもの
大量に印刷したいもの
小ロット印刷ではコストを抑えられますが、大ロットになればなるほどコスト高になります。全国規模で展開したいキャンペーンDMなど、部数の多いものはオフセット印刷の方が割安になります。
印刷クオリティにこだわりたいもの
オンデマンド印刷は特色や金銀、蛍光色が使えないので、こだわったイラストや写真などの再現性がオフセット印刷に比べると低くなってしまいます。また、文字が小さすぎるとにじんでしまう可能性も。商品の美しさやデザインなどを前面に出したいポスター、商品カタログなどの印刷には、あまりオススメできません。
サイズが大きなもの
多くのオンデマンド印刷機はA3サイズくらいまでしか対応していません。B3サイズには対応できない場合が多いのでご注意ください。
おわりに
オンデマンド印刷はスケジュールに余裕がないとき、小ロットの印刷をしたいとき、バリアブル印刷をしたいときなどにオススメの印刷方法です。現在のところクオリティではオフセット印刷と肩を並べられる域まで到達していませんが、印刷機の技術は日々進歩しています。速くて、仕上がりも文句なく美しいオンデマンド印刷機の登場を期待しましょう。
教えて!DM先生 編集部
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