パーソナライズDMとは?成功事例や成果を出すためのポイントを解説

2025.10.29 2018.09.25事例・効果測定
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あなたはパーソナライズDMについてどれだけ知っていますか?高いレスポンス率・コンバージョン率が期待できるDMということもあり、「聞いたこともない!」という方はさすがにいないと思います。しかし、きちんと理解されている方は意外と少ないのではないでしょうか。

とはいえ、最近ますます注目を集めているだけあって、「一度は試してみたい」と考えている販促・マーケティング担当者様もいるでしょう。この記事ではそのような方のために、一般的なDMとの違いから、メリット、注意点、サンプル例、成功事例まで、パーソナライズDMの基本についてまとめて紹介します。

パーソナライズDMとは

パーソナライズ(英:personalize)とは、「あるものを個々人向けにカスタマイズする」という意味です。つまりパーソナライズDMとは、同じセグメントの顧客に同じ情報を伝える一般的なDMとは異なり、「顧客一人ひとりの属性や趣味嗜好、購買履歴などに合わせて作られたDM」を指します。

一般的なDM

パーソナライズDM

ただし、費用や時間の都合上、一人ひとりに対して1から10までまったく異なる内容のDMを制作することはまずありえません。通常は、バリアブル(可変)印刷という印刷技術を利用して、文章(コピー)やコンテンツの一部を差し替える方法が一般的です。

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従来のDMとの違い

来のDMは、同一内容を大量印刷し、不特定多数へ一斉に送付する「マスアプローチ型」の施策が主流でした。しかし、配布コストは抑えやすい一方で、受け手の属性や興味関心を考慮しない内容となり、反応率の向上には限界がありました。
一方、パーソナライズDMは顧客データをもとに、宛名・年齢・購入履歴・地域などの情報を反映して個別最適化を行います。印刷段階で可変項目を設定できるため、一枚ごとに異なるメッセージや画像を出し分けることが可能です。また、メールマーケティングやMA(マーケティングオートメーション)と連動させることで、オフラインでもオンライン同様の「One to Oneコミュニケーション」を実現します。さらに、パーソナライズDMでは印刷や発送後の効果測定も容易になり、どの訴求が成果につながったかを可視化しやすくなります。

パーソナライズDMのサンプル例

では、パーソナライズDMとは具体的にどのようなものなのか、全国でチェーン展開しているアパレルショップのハガキDMを例に、一般的なクリエイティブを2つ紹介します。

セール招待DM

セール招待DM<

赤枠部分が、顧客一人ひとりに合わせて内容を差し替えている箇所です。

このDMのポイントは、裏面の「○○様」という呼びかけをパーソナライズしているところ。ここが「お客様皆さまへ」であれば宣伝にしか見えませんが、自分の名前が入っていることによって、顧客はまるで自分を選ばれた招待客のように特別に感じることができます。「この招待状はお客様全員に送っているわけではありません」という文言があれば、なお良しです。

また、顧客の住所に合わせてセール会場の地図を差し替えることで、余計なスペースを減らしています。

クーポン付き来店促進DM

クーポン付き来店促進DM

顧客一人ひとりの購買履歴データから趣味嗜好を抽出し、個別にオススメ商品を紹介しているDMです。ハガキDMのため、あまり多くの商品は掲載できませんが、パーソナライズ化によって少数でも訴求力の強い内容にすることができます。最近ではAIを活用したレコメンデーションをおこなっている企業もあります。

累計の購入金額に応じて、オファー(クーポン)の割引率も変えています。

パーソナライズDMの可変項目

上の例で紹介したものも含めて、パーソナライズDMで可変項目にすると効果的な要素は次の通りです。

顧客の個人情報 氏名、会員No、累計ポイントなど
商品/サービス 過去の購買データを反映
オファー 顧客ランク/累計購入金額を反映
QRコード 顧客セグメントによってリンク先のLPを変える
ビジュアル、デザイン 性別/年代別の好みや相性に合わせて画像・色合いを変える

また、DMコンテンツ以外でも、パンフレット・カタログなどの同封物の数や内容、発送タイミングでもパーソナライズは可能です。

性別・年代別の最適な色合いと、効果的なDMの発送タイミングについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

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パーソナライズDMを送付するまでの流れ

パーソナライズDMは、単に印刷内容を変えるだけでなく、データ分析から効果測定まで一貫した運用体制が重要です。こちらでは、DM発送までの具体的な流れを5つのステップに分けてご紹介します。

1.顧客データを分析する

パーソナライズDMを作成・送付する際、まずは氏名や住所といった基本情報に加え、購買履歴・利用頻度・性別・年齢・地域などを統合して分析します。
この段階では、単にデータを集めるのではなく「購買傾向」や「行動パターン」を可視化することが重要です。精度の高いパーソナライズを行うには、正確で整理されたデータベースが不可欠です。また、データの偏りや重複を防ぐため、CRM(顧客管理システム)やMAツールを活用してクレンジングを行うことも効果的です。

2.パーソナライズDMの内容を企画する

パーソナライズDMの内容は自社の伝えたいことだけではなく、顧客が「今」必要としている情報を届けることが成果につながるため、顧客目線のメリットを意識しましょう。
目的に応じて、パーソナライズDMに「新商品の案内」「再購入促進」「イベント招待」などのテーマを設定します。ターゲット別に異なる訴求軸を用意することで、より高い共感を得やすくなります。また、QRコードや専用URLを設置し、行動につながる導線の設置もおすすめです。

3.デザインを検討する

文字サイズや配色、レイアウトなどの工夫により、視認性と訴求力を高められます。
とくに、パーソナライズDMでは顧客属性に合わせてビジュアルを変えられる印刷が有効です。たとえば、若年層には明るくカジュアルな配色、中高年層には落ち着いたトーンを採用するなど、印象をコントロールします。ブランドの一貫性を保ちながら、ターゲット別に最適化することで“共感される紙面を作れるでしょう。

4.印刷・発送をする

印刷・発送を依頼する際は、可変印刷(バリアブル印刷)ができる業者を選びましょう。
宛名や金額、クーポンコードなど、顧客ごとに異なる要素を差し込むため、データチェックの正確さが成果を左右します。印刷後は宛名データと発送リストの突合を行い、誤配送を防止。また、販促時期やキャンペーン期間に合わせて発送タイミングを最適化するため、スケジュール管理も重要です。

5.効果を測定する

レスポンス率・来店率・Webアクセス数など、目的に応じた指標を設定し、成果を定量的に評価します。
QRコードやキャンペーンコードを活用すれば、反応を数値で把握できるため、改善点が見えやすくなります。効果分析の結果を次回のデザイン・訴求内容に反映することで、継続的な成果向上が期待できます。

パーソナライズDMで期待できるメリット

パーソナライズDMを実施することで期待できるメリットは、おもに以下の3つです。

レスポンス率・コンバージョン率の向上

DMの反響を上げるための最大のポイントは、受け手(ターゲット)に「これは自分のための手紙だ」と感じてもらうこと。パーソナライズDMで、顧客一人ひとりにマッチング精度の高い情報を伝えることができれば、通常のDMよりもはるかに高いレスポンス率・コンバージョン率が期待できます。

見やすい・読みやすいデザインが組める

属性やセグメントが異なる顧客をターゲットにしてDMを作ろうとすると、どうしても注釈的な説明が必要になり、ゴチャゴチャしたデザインになってしまいます。しかし、個別に内容を差し替えられるバリアブル印刷を使えば、そうした心配はいりません。店舗や施設をチェーン展開している企業の、多品種小ロットのDMにも最適です。

顧客ロイヤリティが高まる

多くの企業が新規顧客獲得に苦労している現在、既存顧客の企業に対する信頼感や愛着を醸成すること、つまり「ファンづくり」がますます重要になっています。そして、そのカギとなるのが「特別感」の提供。パーソナライズDMで顧客一人ひとりに対して「あなただけ」の特別感を演出できれば、ロイヤリティの向上も期待できます。

成果につなげるために押さえるべきパーソナライズDMのポイント

パーソナライズDMは、データ活用やタイミング設計、導線構築、改善サイクルといった複数の観点を押さえることで、初めて高いレスポンス率や顧客満足度を得られます。以下にて、成果を出すために重視すべき4つのポイントを紹介します。

既存の顧客データをしっかり活用する

成果を出すパーソナライズDMは、年齢や住所などの表層的な情報だけでなく、購買履歴やWeb閲覧履歴などを掛け合わせて分析し、より精密なセグメントを構築しています。
リピーターや高LTV顧客を対象に、購入商品の傾向をもとにしたおすすめ情報を差し込むことで、反応率を高められます。休眠顧客に対しては「以前の購入から○○日が経過しています」など、関係を再構築するためのメッセージ設計も有効です。

タイミングや文脈を考える

パーソナライズDMは顧客が最も関心を持ちやすいタイミングを狙うことで、反応率が大きく変わります。
たとえば誕生日や会員更新月、過去の購入タイミングなど、顧客行動に合わせた配信設計が効果的です。また、送付時期が商戦期やイベントと重なる場合は、デザインやメッセージもその文脈に寄せることで自然な訴求が可能になります。

読者が行動しやすい内容・設計を心がける

すべてのDMには目的があり、その目的に応じた導線の設計を意識する必要があります。
たとえば、QRコードや短縮URLを紙面上で目立つ位置に配置し、スムーズにWebページへ遷移できるようにすることが挙げられます。また、CTA(Call To Action)には具体的な言葉を使うことがポイントです。「今すぐ確認する」「限定特典を見る」など、行動をイメージしやすい文言が反応率向上につながります。デザイン上も視線誘導を考え、余白や強調色を活用して行動を促進する構成が効果的です。

必ず効果測定と改善を行う

DMは一度送って終わりではなく、結果をもとにした分析と改善を繰り返すことで最適化されていきます。
A/BテストやPDCAサイクルを活用し、訴求文・デザイン・オファー内容ごとの反応を比較することで、次回施策の改善点を導けます。また、反応率・CV率・ROIなどの指標を定期的にモニタリングし、顧客層ごとの成果を分析することも大切です。パーソナライズDMは「送って終わり」ではなく、「継続的に育てるマーケティング施策」として運用していくことが成功への近道です。

パーソナライズDMを実施する際の注意点

このように良いことづくめに思えるパーソナライズDMですが、実施にあたっては注意点もあります。

「広告郵便物」として承認されないことが多い

通常、DMを大量に発送する際は、コスト削減のために郵便局の「広告郵便割引」を利用するのが普通ですが、パーソナライズDMは基本的にこの割引を受けられません。それぞれ内容が異なるため、同一内容が条件である「広告郵便物」として認められないからです。

≫広告郵便物 ご利用の条件(郵便局ホームページ)

「広告郵便物」として承認されるパーソナライズDMとは

ただし、例外もあります。同一内容の広告を印刷したものに、購入・来店・サービス加入促進など、広告効果を高めるための簡単な文面(氏名、性別、年齢、ポイント数など)の記載があれば、その文面が同一でなくても、同一の内容性が備わっているものとして扱われます。

以下の2つの例を参考にしてください。

参考例1.獲得ポイントの記載

獲得ポイントの記載したDM

顧客別の累計ポイント数が可変項目になっていますが、商品購入を促すために記載されていると認められることから、同一内容を備えた広告郵便物として取り扱われます。

参考例2.料金プランの記載

料金プランの記載したDM

顧客氏名・利用料金が可変項目になっていますが、サービスの利用促進を目的とした記載と認められることから、同一内容を備えた広告郵便物として承認されます。

※実際にパーソナライズDMを実施する際は、事前に郵便局への確認をおすすめします。
※この項目は『新DMの教科書』(一般社団法人日本ダイレクトメール協会,2017)を参考にしています。

パーソナライズDMの成功事例

現在、その手法の斬新さと効果の高さで注目を浴びているのが、㈱ディノス・セシールが実施しているパーソナライズDMです。

DMのターゲットは、同社のECサイトで商品をカートに入れたものの購入に至らなかった方、いわゆるカート離脱客(カゴ落ち客)。サイトのデータを印刷所と連携させ、離脱から24時間以内に検討商品を含む販売促進DMを発送したところ、同内容のメールのみを送付した場合と比べて、購入率が約20%アップしたということです。

ECサイト カート離脱客向けパーソナライズDM

これはまさに、DMの特長である行動喚起力の高さと、細かい行動履歴もデータとして抽出できるWebの魅力が結実した、見事な施策といえるでしょう。

数年来、デジタル技術の急速な発達により、EC通販企業を中心にデジタルに特化してプロモーションやマーケティングをおこなう企業が増えていました。しかし今や、Eメール・メルマガの開封率の下落でも明らかなように、デジタルでは紙の代替ができないことが明らかになりつつあります。

先に挙げた行動喚起力以外にも、到達率、保存性、記憶定着率といった面で、まだまだデジタルは紙に及びません。また、「オンライン施策だけでは、会員の8%しかコミュニケーションできない」(富士フィルム)、「Eメールのみと比べてDMと併用のほうかアクセス率・注文率がアップした」(富士フィルム、リクルートジョブス)といった意見も目にします。

パーソナライズDMか否かにかかわらず、今後、このような紙とデジタルを併用したクロスメディア(チャネルミックス)施策は、ますます増えていくのではないでしょうか。

DMとデジタルの併用についてはこちらの記事も参考になるでしょう。

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≫メルマガ×DMの組み合わせで売上をアップさせよう!事例もご紹介

おわりに

こちらの記事では、パーソナライズDMとはどのようなものなのかについて解説しました。
以上、パーソナライズDMについての理解は深まりましたでしょうか?ある有名なクレジットカード会社では、既存会員の活性化のために、多くてひと月に50パターンのパーソナライズDMを発送していると聞いたことがあります。さすがにその数には驚かされましたが、しかし、それだけ効果が確かな手法であるという証ともいえるでしょう。DMの究極の目的は、顧客(ターゲット)にとってベストなタイミングでベストなメッセージを伝えること。そして、それを可能にするのがパーソナライズDMです。自社ならどういった活用ができるか、一度考えてみてはいかがでしょうか。

タグ : マーケティング
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教えて!DM先生 編集部

ディーエムソリューションズ㈱のダイレクトメール・物流のエキスパートメンバーで結成。法人取引14,400社以上の実績にもとづいた、DMの反響アップ、コスト削減、業務改善などに役立つ情報を続々発信していきます。