印刷デザインデータで注意したい画像やテキストの著作権について

2021.11.22 2019.07.29印刷・デザイン
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印刷デザインを制作する上で、著作権についてどの程度理解できていますか?

写真やイラストを無断で使用してはならないのはもちろん、デザインやコピー自体にも著作権があり、デザイン制作にあたっては著作権侵害を起こさないように細心の注意を払う必要があります。

この記事では、著作権についての基本事項や著作権侵害を起こさないためのポイントについてわかりやすく解説します。要点を把握した上で、デザイン業務にあたってください。

著作権とは?

著作権とは、知的財産権の一つで、「創作物について、著作者が他者に利用を認めたり禁止したりできる権利」のことです。具体的には、「著作者人格権」と「著作者財産権」の2つの権利が保護されます。(詳しくは後述します。)

著作権は製作者が作品を制作した時点で自然に発生するため、申請や登録をする必要はありません。守られる期間は、著作者の死後50年間(映画などは70年間)です。

近年は、デジタル著作物の普及も進んでいるので、技術の進化似合わせて著作権法も改正を繰り返しています。

著作権の目的

なぜ著作権が守られるのかというと、「文化を発展させるため」です。自分の著作物が他社に真似されたり改変されたりしないということは、著作者が安心して作品を生み出せる環境であるということです。

単に作り手を守る権利ではなく、すべての人にとって大切な権利なのです。

著作権と商標権の違い

著作権と同じく知的財産権に含まれる権利に「商標権」があります。商標権とは、ブランドの顔となるデザインや商品名、ロゴマーク、音楽、色彩など商業活動における権利を保護するものです。

著作権との大きな違いは、特許庁に申請して審査を受け、商標登録を行った上で保護されるという点です。商標権で保護される期間は10年間ですが、期間更新が可能なので半永久的に商標を守ることができます。また、商標権の場合は他人に譲渡・貸与することも可能です。

いずれも創造物に対する権利ですが、似ているようで全く異なる性質のものなので、しっかり区別しておきましょう。

著作物の種類

著作権で守られる著作物には、どのようなものが含まれるのでしょうか。著作権法においては「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定められています。このままでは曖昧でわかりにくいので、以下の表で具体的な事例にまとめてみました。

種類
具体例
言語 小説、論文、脚本、講演、詩歌、
俳句、キャッチコピー、歌詞 等
デザイナー作成によるキャラクター 企業のマスコットキャラクター 等
図面・図表・模型・図形 イラスト、漫画、地図、設計図 等
写真 写真、グラビア 等
プログラム コンピュータープログラム 等
映画などの映像 映画、TV番組、ゲームソフト、動画サイトの動画 等

著作権の種類

著作権は、「著作者人格権」と「著作者財産権」という2つの権利が含まれます。簡単にいうと、「著作者人格権」は制作者の名誉を守るためのもの、「著作者財産権」は作品の対価を保証するためのものという違いがあります。それぞれ、以下の表にまとめるような複数の権利を内包しています。

著作者人格権

権利名
内容
公表権 著作物を公表するか、どのように公表するかを決める権利
氏名表示権 制作者の氏名を表示するか、表示する場合に本名かペンネームかを決める権利
同一性保持権 著作物の内容などを無断で変更されない権利

著作者財産権(いわゆる著作権)

権利名
内容
複製権 無断で著作物をコピーさせない権利
上演権、演奏権、上映権、公衆送信権 無断で上演、演奏、上映、公衆に向けて公表されない権利
口述権 無断で口述されない権利
展示権 無断で公に展示されない権利
頒布権 無断で複製して頒布されない権利
譲渡権 著作物や複製物を公衆に提供する権利を譲渡できる権利
貸与権 著作物や複製物を貸与できる権利
翻訳権・翻案権 無断で著作物を翻訳・翻案(映画化など)されない権利

著作隣接権について

著作物を伝達する(音楽や映画を公衆に見せる、聞かせる)ためには、著作者以外の力も必要です。著作者以外にこれらに関わる人の権利を保護するのが「著作隣接権」です。

具体的には、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に権利が認められています。

二次的著作物の著作権について

二次的著作物の著作者は、二次的著作物の原著作物の著作者と同一の権利が認められます。「二次的著作物」とは、原著作物を翻訳、翻案、編曲、変形して作成したものです。

著作権に違反しないためのポイント

著作権に違反しないために把握しておくべきポイントについて解説します。

基本的な法律についておさえておく

今回の記事で解説している内容をベースに、著作権に関する法律の内容を把握しておきましょう。

著作権の発生タイミングと保護期間はいつまで?

著作権は、著作物を制作した時点で発生し、作者の死後50年までその権利が保証されます。

著作権侵害になってしまうケースとは?

前項目でご紹介した「著作権」の具体的権利にふれると、著作権侵害とみなされます。例えば、以下のようなケースが著作権侵害に当たります。

  • JASRACからの許諾なしまたは引用の範囲を超えて歌詞を掲載する
  • 権利者の許可無くインターネットにアップロードする
  • 無断でイラストや写真をチラシに利用する
  • 他の人のデザインを真似する

著作物の利用にあたっては、著作者の意向を確認し、要件を満たす範囲で利用するようにしましょう。

著作権侵害にならないケースとは?

状況や目的によっては、許可なく複製や掲載を行っても著作権侵害とならないケースもあります。ただ、あくまでケース・バイ・ケースなので、安易に使用せずに慎重に確認するようにしてください。

私的利用の場合

個人や家族などの範囲であれば、著作物の複製ができます。例えば、レンタルしてきたCDを音源としてコンピューターに取り込む場合等が該当します。ただ、私的利用の場合であっても、違法アップロードされているものと知りながらダウンロードすると処罰の対象とされています。

営利目的でない場合

営利を目的とせず、料金を取らない場合は上演、演奏、朗読などができます。

権利者に認められた場合

権利者が認めた条件の範囲内であれば、都度許可を得る必要はありません。

上記以外にも、教育機関における複製、視覚・聴覚障害者のための複製、公表された著作物の引用等の場合であれば、著作物を利用しても著作権侵害には当たりません。

フリー素材を利用する場合も利用規約の確認を

チラシやDM作成時にフリー素材を活用することも多いと思います。いくら「フリー素材」という名前であっても、利用の範囲はサイトごとに異なっています。例えば、商業活動への利用は制限があったり、制作者の氏名を表記することが定められていたりします。

フリー素材を活用する場合も、利用規約に目を通してそれに違反しないようにしましょう。

海外の著作物にも権利があるので注意

著作物として守られるのは、国内のものだけではありません。世界各国は条約を結んでお互いに著作物を保護しています。著作権は「ベルヌ条約」「万国著作権条約」によって保護されており、日本はいずれの条約にも加入しています。

違反した場合の刑罰について

著作権侵害は犯罪なので、被害者が告訴することで処罰の対象となります。著作権・著作隣接権の侵害は10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金、著作者人格権の侵害は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金などが定められています。法人が侵害した場合は、3億円以下の罰金となります。

おわりに

チラシやDMを制作する際には、著作権侵害を起こさないように最新の注意をはらいましょう。また、自身の著作物が無断で使用されている場合、放置しておくと収益や信用の低下にも繋がります。トラブルに気づいた場合は、早めに専門家への相談を考えてください。

著作権について正しく理解して、業務に活かしましょう。

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教えて!DM先生 編集部

ディーエムソリューションズ㈱のダイレクトメール・物流のエキスパートメンバーで結成。法人取引14,400社以上の実績にもとづいた、DMの反響アップ、コスト削減、業務改善などに役立つ情報を続々発信していきます。