ダイレクトメールの効果測定指標と計算方法について

2024.05.22 2023.02.22事例・効果測定
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DMは効果測定を行い、検証・改善を重ねながら、徐々に内容をブラッシュアップすることで、安定的に効果を生むことができる販促手法です。まさに「効果測定こそ、DM成功のカギである」といっても過言ではありません。

ここでは、DMの効果指標と算出方法、そして検証・改善のための活用例まで詳しく紹介します。

DM実施前に確認すべき数値

読者の中には、一般的なDMの効果数値が気になる方もいらっしゃるかもしれません。でも実は、それらはあまり参考にはなりません。なぜならDMの効果は、業種や商品・サービス、目的などによって大きく異なるからです。

それよりも大切なのは、自社のDMの効果を正確に把握することです。まずは、その準備として必要な数値を紹介します。

総DM費

いわゆるコストのことです。広告とは違い、顧客にダイレクトに届けるDMは、封入・封緘作業など、意外と多くの種類のコストがかかります。費用対効果を正確に算出するためにも、すべて漏らさず計算しましょう。

総DM費の計算式

総DM費 = 制作費 + 印刷費 + 発送準備作業費 + 配送費

それぞれの費用はDMの形状や同封物、業者、発送数や発送方法によっても変わってきます。また、制作から発送までワンストップでおこなうサービスもあります。予算や目的に応じて、最適な選択をしてください。

BEP(=Break Even Point:損益分岐点)

ビジネスで様々な使われ方をする指標ですが、ここではDMのコストを回収するために最低限必要な受注件数のことを指します。

BEPの計算式

BEP(件) = 総DM費 ÷ 粗利単価
例:総DM費が350万円で、粗利単価@5,000円の商品を販売する場合
BEP「700件」 = 3,500,000(円)÷ @5,000(円)

DMを見た顧客から最終的に700件の受注があれば、コストを回収できることがわかります。

LTV(=Life Time Value:顧客生涯価値)

LTVとは「ひとりの顧客が生涯でうみだしてくれる価値(利益または売上)」のことを指します。ただし「生涯」という長期間では実務上扱いづらいため、一般的には数ヵ月や年単位で区切って算出します。複数の商品を取り扱っている場合は、商品ごとのLTVが必要です。

LTVの計算式 ※1年区切り、利益ベースの場合

LTV(円) = 1年間の総粗利益 ÷ 1年間の総新規顧客数

他に平均購入頻度などを用いた複雑な計算式もありますが、ざっくりとしたLTVはこれで把握できます。

LTVを把握しておくメリットとは、受注1件あたりの獲得コスト(CPO)の評価基準がもてることです。例えばLTVが60,000円の場合、思ったより受注件数が少なくても、1受注あたりのコストが59,999円以下であれば、1年後には利益化できることが予測できます。

また、ある程度受注率(CVR)の予測が立つようになると、投下すべきDM費用の計算にも使えます。

DMの反応をはかる指標

続いて、DMの反応を測る指標を紹介します。業種やDMの活用目的によっては使わないものもあるかもしれませんが、どれも重要な指標です。

レスポンス率

B to B(企業向け)ビジネスや不動産など高額な商品・サービスを扱う業種の場合、いきなりDMで販売せず、資料請求やアンケート回答など、興味喚起のためのステップを設けることが一般的です。

このような本商品購入、本サービス契約につながる可能性のあるアクションを「レスポンス」と呼びます。通信販売でのサンプル商品の注文もこれにあたります。

レスポンスに該当するアクション例

BtoB DM

資料請求、問い合わせ、見積もり依頼、アンケート回答

不動産DM

オープンハウス申し込み、アンケート回答

化粧品、健康食品通販DM

サンプルやお試し商品の注文

店舗DM

クーポン券持参での来店

レスポンス率の計算式

レスポンス率(%) = レスポンス件数 ÷ DM発送数 × 100
例:100,000通のDMを発送して5,000の申し込みがあった場合
レスポンス率「5%」 = 5,000(件) ÷ 100,000(通)

レスポンス率は個々のDMの効果比較の指標になるほか、過去の本品購入やリピート購入への転換実績(%)がわかっていれば、売上予測にも活用できます。

CVR(=Conversion Rate:コンバージョン率/転換率)

コンバージョンとは直訳すると「転換」を意味し、マーケティングではコストが成果に「転換」すること、つまり施策のゴールを指します。Webマーケティングでは資料請求などをカウントする場合もありますが、DMでは本当のゴールである本品購入や成約を指すことが一般的です。

コンバージョンに該当するアクション例

  • 本品の購入(サンプル注文は含まず)
  • サービスの成約

CVRの計算式

CVR(%) = コンバージョン件数 ÷ DM発送数 × 100
例:100,000通のDMを発送して2,500件の注文があった場合
CVR「2.5%」 = 2,500(件) ÷ 100,000(通)

すべてのレスポンスが売上につながるわけではないので、レスポンス率よりも重要度の高い指標です。

F2転換率(引き上げ率)

初回にサンプル商品を注文した顧客が、2回目に本品購入やリピート購入することを「F2転換」または「引き上げ」といいます。あまり一般的な指標ではありませんが、化粧品や健康食品など、リピート商材のDMで使用されています。

F2転換率の計算式

F2転換率(%) = 初回サンプル注文件数 ÷ 2回目本品/リピート購入件数 × 100
例:DMから200件のサンプル注文があり、そのうち100件が2回目の本品購入につながった場合
F2転換率「50%」 = 100(件) ÷ 200(件)× 100

DMの費用対効果をはかる指標

どんなにCVRやF2転換率が向上しても、利益がコストを下回っていては意味がありません。DM施策をビジネスとして成功させるためには、反応だけでなく、利益やコストの関係からの効果検証も必要です。ここでは費用対効果をはかる様々な指標を紹介します。

CPR(=Cost Per Response:レスポンス1件あたりの獲得単価)

1件のレスポンスを獲得するのに費やしたコストを指します。見込み客獲得単価やCPI(=Cost Per Inquiry)という言葉を使う場合もあります。

CPRの計算式

CPR(円) = 総DM費 ÷ レスポンス件数
例:総DM費に350万円かかり、500件のレスポンスがあった場合
CPR「@7,000円」 = 3,500,000(円) ÷ 500(件)

CPO(=Cost Per Order:受注1件あたりの獲得単価)

1件の受注を獲得するのに費やしたコストを指します。通常、初回の購入のみをカウントし、2回目以降の購入は含みません。顧客獲得単価とも呼ばれます。

CPOの計算式

CPO(円) = 総DM費 ÷ レスポンス件数
例:総DM費に350万円かかり、250件の受注があった場合
CPO「@14,000円」 = 3,500,000(円) ÷ 250(件)

価格の低い商品の場合、CPOが商品単価より高くなることもありますが、その後のリピート回数や客単価向上により、利益を出すことが可能になります。

定期CPO(リピート注文1件あたりの獲得単価)

あまり一般的ではありませんが、化粧品や健康食品の単品通販など、リピート商材を扱う業界で使われることの多い指標です。リピーター獲得単価ともいいます。

定期CPOの計算式

定期CPO = 総DM費 ÷ リピート注文件数
例:発送費に350万円かかり、50件のリピート注文があった場合
定期CPO「@70,000円」 = 3,500,000(円) ÷ 50(件)

ROI(Return On Investment:投資対効果)

コストに対する利益の効果を測定するために使われる指標がROIです。

ROIの計算式

ROI(%) = (総粗利益-総DM費) ÷ 総DM費 × 100
例:総DM費が350万円で、粗利単価@500円の商品を5,000件受注した場合
ROI「-29%」 = (2,500,000円 – 3,500,000円) ÷ 3,500,000円 × 100

ROIは-29%となり、コストに対して赤字になってしまったということがわかります。

ただし、これでこのDM施策が失敗だったと判断するのは早計です。仮に5,000件の受注のうち10%の顧客(500人)が、その後1年間で粗利10,000円以上購入した場合、ROIはプラスに転じるからです。

リピート購入が見込める商品・サービスのDMでは、初回のROIに捉われすぎず、LTVを参照し、中・長期的な視点で判断する必要があります。

その他の重要な指標

すぐに売上に直結することは少なくても、検証すべき重要な指標があります。それが、Webページへのアクセスです。

Webページへのアクセス

スマートフォンの普及以降、DMにURLや検索窓、QRコードを載せて、Web誘導を図ることは必須になっています。一般社団法人日本ダイレクトメール協会の調査でも、DMを受け取った後の行動でもっとも多いのが、「ネットで調べた」という結果が出ているほどです。

引用元:一般社団法人日本ダイレクトメール協会「DMメディア実態調査2021

Google Analyticsなどの解析ツールを使ってDM到着タイミングのアクセス状況を検証することで、商品・サービスへの興味関心の度合いをはかることができます。また、専用のURLやQRコードを掲載すれば、DMからのコンバージョンやレスポンスも計測することが可能です。

効果測定からの改善例とヒント

以上、DMの効果測定に必要な指標をみてきました。ただし、これらの数値を算出して「前回より良かった」「悪かった」と判断するだけでは充分ではありません。結果を検証した上で課題を仮説立て、次の改善につなげることが必要です。

例えば、法人向けDMでレスポンス率が悪かった場合。内容やサービスではなく、発送のタイミングがターゲット業界の繁忙期にあたり、あまり目を通してもらえなかったのが要因かもしれません。

化粧品通販DMでサンプル商品のレスポンス率は良くて、定期CPO(リピーター獲得率)が悪い場合。価格の影響だけでなく、DMの中で「商品を続ける必要性や続けることで得られる価値」といった、リピート購入を後押しする情報がアピールできていなかった可能性もあります。

DMの4大要素はターゲット、オファー(特典)、タイミング、クリエイティブといわれています。それぞれの指標の結果をもとに、これらの要素を改善していくことで、顧客のニーズにあったDMに最適化していきましょう。

DM改善のヒントはこちらで詳しく紹介しています。

おわりに

紹介した指標は種類も多く、英語ばかりで最初はとまどうかもしれません。でも使っているうちにすぐに慣れますし、なによりすべて重要なものです。迷ったりわからなくなったりしたら、何度でもこの記事を参考にしてください。

タグ : マーケティング
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教えて!DM先生 編集部

ディーエムソリューションズ㈱のダイレクトメール・物流のエキスパートメンバーで結成。法人取引14,400社以上の実績にもとづいた、DMの反響アップ、コスト削減、業務改善などに役立つ情報を続々発信していきます。