ダイレクトマーケティングの特徴とメリットとは?
2024.10.07 2018.08.20マーケティング近年、ますます注目を集めているダイレクトマーケティング。かつては通信販売会社の専売特許といったイメージでしたが、いまや保険、教育、アパレル、不動産……など、業界や企業規模、B to B/B to C問わず、多くの企業に導入されています。
その最大の要因は、いうまでもなくインターネットをはじめとするテクノロジーの発展です。なかでもWEB上のユーザー行動が詳細に可視化できるようになったこと、それにともなう広告技術の進化、そして企業と消費者のコミュニケーションが容易になったことが大きなポイントといえるでしょう。
とはいえ、その歴史は古く、必要な知識やノウハウは膨大な量にのぼります。また、インターネットの普及により消費者の購買行動に新たな要素――「検索」――が加わったことで、アナログ施策のみの時代とは手法や形も少しずつ変わりつつあります。
そこでこの記事では、最新の「インターネット時代のダイレクトマーケティング」の特徴やメリットについて、最低限知っておきたい基本知識をわかりやすくポイントをしぼってまとめました。興味レベルの方から実施を検討している方まで、ぜひ参考にしてください。
目次
ダイレクトマーケティングとは?
ダイレクトマーケティングとは、簡単にいうと「企業が顧客と直接コミュニケーションを図るマーケティング」のことです。ここでいうコミュニケーションには、企業からのセールスや情報発信、それに対する顧客からのレスポンスやアクション(問い合わせ・資料請求・購入・来店など)を含みます。つまり直接的かつ双方向的。テレビCMや新聞広告で、不特定多数の消費者に一方的にメッセージを発信するマス・マーケティングとは対立的な手法です。ダイレクトレスポンスマーケティングと呼ばれることもあります。
もう一点、顧客一人ひとりの属性やレスポンス履歴をリスト化・データ化し、マーケティング活動に活用するという点も大きなポイントです。例えば下の図のように、「一度購入した顧客にDMを送付し、リピート購入を促す」という販促施策は、ダイレクトマーケティングの一環です。企業が直接顧客とつながって、購入履歴にもとづいて購入を促していますよね。
ダイレクトマーケティングの全体像
ダイレクトマーケティングの全体像を簡略的にまとめたのが上の図です。それぞれのメディアや施策についてはのちほど説明します。ここで注目してもらいたいのは、ダイレクトマーケティングが「一度商品を売って終わり」ではなく、フェーズごとにさまざまなアプローチを重ねながら、顧客と長く付き合いを続けていく(それによって売上を上げていく)マーケティングであるということです。
ダイレクトマーケティングの特徴
ダイレクトマーケティングには、次の5つに代表される特徴があります。
一つずつ説明していきます。
ダイレクト(Direct)
最大の特徴は、顧客と「直接」コミュニケーションを取るという点です。不特定多数に向けたマス・マーケティングと違い、顧客をリスト化し、「誰が」問い合わせや資料請求、購入というアクションをとったか、ということをデータ化できるからこそ可能な手法です。
顧客にとっては「不特定多数の誰か」ではなく、「自分自身」に宛てたアプローチを受けることになるので、広告・販促ツールのメッセージも“自分ごと”として受け取られやすく、プロモーションの精度も高まります。
メジャラブル(Measurable)
「測定可能」という意味です。紙・WEB問わず、あらゆる広告・販促施策の反響を数字で測定できるのはダイレクトマーケティングの大きな強みです。広告の費用体効果はもちろん、「何件の資料請求があって、そのうち何人が後に購入にいたったか」といったようなことも明確にわかります。
結果が定量的に把握できると、課題の発見や改善も容易になります。ダイレクトマーケティングの広告・販促ツールの改善策として一般的なのが「ABテスト」になります。異なるクリエイティブ(キャッチコピーやデザインなど)のDMを同じ属性のターゲット層に同部数発送し、それぞれの結果を測定しながら効果の高いクリエイティブを見出してゆく手法です。
ある大手通販会社では、マーケティング本番展開前には必ず小規模のテストを繰り返し、もっとも結果の良かったクリエイティブの広告やDMを本番に採用しています。
ワン トゥ ワン(One to one)
直訳すると「1対1」となります。たとえ何万、何十万の顧客を抱えていても、個々の顧客に合わせたアプローチをおこなうのがダイレクトマーケティングです。
そのため、「○○県にお住いの方へ」と地域でコピーを変えたり、既存顧客向けのDMでも見込み客、リピーターなどのセグメントによって挨拶文の文面を変えたりするのが一般的です。
ECサイトの場合なら、顧客のWEB上での行動履歴(閲覧ページ・購入商品)にもとづいて、オススメ商品の提案ができます。購入後に送るメールの内容も、購入商品や顧客セグメントによって異なります。キャンペーン時に、累計購入金額に合わせて、異なったオファー(特典)を提供することもできます。
リレーションシップ(Relationship)
「関係」を意味します。ダイレクトマーケティングでは、「売る」だけでなく、顧客との親密感や信頼感を醸成し、「つながり」を強化することも重要です。
顧客と良好な関係を築くことができれば、継続的な取引につながる可能性も高まり、長期的で安定した利益増加が見込めます。顧客の囲い込み、優良顧客化などさまざまな呼び方がありますが、目的はライフタイムバリュー(LTV=顧客生涯価値)を最大化することです。そのためには、1回購入してくれるだけの一見さんではなく、何度もお店に通ってくれる常連さんを大切にし、満足度を高めることが必要です。
インタラクティブ(Interactive)
インタラクティブとは「双方向の」「対話型の」という意味です。顧客一人ひとりの属性や購入履歴をデータ化するダイレクトマーケティングでは、顧客との双方向のやり取りが可能です。たとえば、購入客へはお礼状の発送、リピート客には別のオススメ商品の提案…など、顧客一人ひとりの行動に対応したアプローチをおこないます。
もちろん実際にコミュニケーションをとることもあります。お声(体験談)を募って商品・サービスの改善につなげたり、注文受付などのコール時に潜在ニーズを掘り起こしたりするのも大切な施策です。こうした、マス・マーケティングにはないきめ細やかな対応が、「またここで買いたい」という動機づけになり、顧客との長期的な関係構築につながります。
メリット:顧客獲得と顧客活性化プロセス両方にアプローチできる
ダイレクトマーケティングの最大のメリットとして、顧客獲得と顧客活性化両方のプロセスにアプローチできるという点が挙げられます。つまり、新規顧客の獲得と、既存顧客の育成が両立できるマーケティング手法なのです。
リードジェネレーションで見込み客にアプローチ
リードジェネレーションとは、自社の商品やサービスに関心を示し、将来顧客になる可能性のあるユーザーを増やすための施策の総称です。ここで、いかに効率良く質の高いリストを獲得できるかが、マーケティング全体の成否を決めるといっても過言ではありません。
一般的なアプローチ方法は紙・WEBの広告です。通販ならサンプル商品や初回限定割引価格、店舗ならクーポン、B to Bや高額商材の場合は資料請求やアンケート、メルマガ登録などで集客を図ります。こうしたプッシュ型のアプローチ以外に、最近その効果の高さで注目されているのが、オウンドメディアなどのプル型メディアです(詳細は後ほど説明します)。また、展示会などのイベント出展も、関心度合いの高い見込み客に出会える可能性が高く効果的です。
顧客を育てるリードナーチャリング
リードジェネレーションで獲得した見込み客を、顧客からリピーター、そしてロイヤル顧客へと育てるのが「リードナーチャリング」のプロセスです。ロイヤル顧客とは、ひと言でいうと「ファン」になります。価格などではなく、商品やブランド、会社に信頼や愛着を感じて購入をつづけてくれる顧客のことです。
施策としては、継続的な購入・来店をうながすリピート促進、客単価を上げるためのアップセル(顧客が検討中/購入中の商品より高額の商品をすすめる販売手法)・クロスセル(ある商品を購入した顧客に関連商品や別の商品もすすめる販売手法)、一度離れた顧客を呼び戻す休眠掘り起こし(カムバック)、そして先に挙げたRelationship(関係)を深めるためのコミュニケーションも含まれます。こうした施策を総称して、「CRM=Customer Relation Management(Marketing):顧客関係管理」と呼ばれる場合もあります。
アプローチの種類は多岐にわたります。紙ならDM、WEBならメール(メルマガ)が一般的。他にも、介護やサプリメント通販などのシニア向けビジネスでは、定期的に冊子タイプのコミュニケーションツールを発行し、顧客の川柳、絵手紙などの作品を掲載することで関係性を深めています。若年層からミドル層には、ソーシャルメディアやオウンドメディアが人気です。
最近、キャンペーン時のプロモーションで注目を集めているのが「クロスメディア戦略」。記憶に残りやすく行動喚起力の高い紙メディアと、利便性の高いWEBメディアそれぞれの特長を生かした併用施策です。
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また、“モノ(商品)”から“コト(体験)”へというマーケティング業界の潮流はダイレクトマーケティングでも変わらず、顧客を招いて、経営者・スタッフとの交流やブランド体験を目的としたイベントを開催する企業も多くみられます。
ダイレクトマーケティングで使われるメディアの種類
ダイレクトマーケティングは、DMを使ったマーケティングと限定的に理解されることがありますが、実際はDMのような紙媒体だけでなく、あらゆるメディアを活用するのが特徴です。
ダイレクトマーケティングで使われるメディアの代表例をご紹介します。
DM
ダイレクトマーケティングで活用するメディアの代表格です。顧客の行動履歴やセグメントに合わせて、お礼状やカタログ、商品見本や試供品、キャンペーンの案内や新商品の告知などを発送します。
目的は、購入や来店、資料請求などのレスポンスを得ること。そのためにはコピーからデザイン、発送方法にいたるまで、アクションを起こしてもらうためのノウハウが欠かせません。
新規開拓にも有効ですが、特に売上へのインパクトが大きいリピート促進やアップセル、クロスセルの施策で大きな効果を発揮します。まさに、LTV最大化のために欠かせないメディアといえるでしょう。
雑誌・新聞広告
不特定多数に向けたマス広告の一種ではありますが、ターゲットを絞った内容で構成し、電話での注文、メールでの問い合わせ等でその後のアクションを促すことで、見込み顧客の情報を獲得できます。このような、広告自体が「売り場」の役割を担う広告を「レスポンス広告(ダイレクトレスポンス広告)」と呼びます。テレビショッピングやラジオショッピングも同様です。
消費者から見たときの信用性の高さがメリットですが、広告枠の状況や媒体審査により、希望の日程・内容で掲載できるとは限りません。また、媒体によって読者層が異なるため、ターゲットに合わせた媒体選びが不可欠です。
折込チラシ
新聞に折り込まれるチラシです。メリットは使い勝手の良さ。雑誌・新聞広告とは異なり、配布日やエリア、部数を細かく調整できるので、ローカル店舗から大手チェーン店、通販会社まで、新規獲得用のメディアとして幅広く活用されています。デザインや紙質にこだわらなければ、コストも抑えることができます。
同じチラシでも、ポスティングと違い、一挙に全国にリーチできるのも魅力です。一方で、新聞購読世帯数の減少や、新聞未購読世帯へアプローチできない、若年層になかなか読まれないなどのデメリットがあります。
メール
ダイレクトマーケティングでおもに活用されているのは、顧客一人ひとりに合わせた内容・タイミングでメールを送る「ステップメール」です。WEB登録のお礼や購入時・購入後の個別案内、誕生日の特典メールなど、幅広く活用できます。その他、広告で獲得した顧客リストにメルマガを配信し、関係性を構築しながら商品・サービスを販売するという手法も多くみられます。
紙にくらべて制作・発信の手間が少ないこと、低コストであることがメリットですが、その分競合も多く、開封率・閲読率が低い傾向にあります。そのため、DMと併用して相乗効果を図る「クロスメディア施策」をおこなう企業も増えています。
電話
テレマーケティングも、ダイレクトマーケティングにおいて重要な役割を担います。メインはB to Bビジネスと通販会社。広告やDMからの注文・申し込みを受け付けるインバウンドコール(受信)と、おもにDM発送後のフォローとしておこなうアウトバウンドコール(発信)が活用されています。
売上の面であなどれないのがインバウンドコール。多くの通販会社は、ここでサンプル申し込みの見込み顧客を本商品購入やリピート購入へと誘導し、成果をあげています。
アウトバウンドコールとDMの併用方法や事例は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
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ソーシャルメディア
TwitterやFacebook、Instagram、LINEなどのSNSを指します。とくに若年層と親和性の高いメディアです。
一方的な情報発信だけでなく、コメントのやりとりを通じて直接顧客とコミュニケーションを取り、親近感やロイヤルティを醸成しながらセールやクーポンの紹介をすることで購買につなげます。うまく活用すれば、広告費をかけずに爆発的に認知度を上げることも可能です。
インターネット広告
リスティング広告、記事広告、Facebook・Twitter・Instagram広告などの種類があります。ユーザーの検索行動や趣味、属性に応じた細かいターゲティングが可能で、見込み客の獲得に有効です。
紙の広告と大きく異なるのは、コントロールの容易さとリアルタイム性。反響をみながら、ほぼオンタイムで広告内容や出稿パターンの変更が可能です。ただし、実施企業の増加により、コンバージョン率(成約・購入率)の低下や広告単価が高騰しているといったデメリットもあります。
オウンドメディア
自社で運用するオリジナルのWEBメディアです。目的は、有益なコンテンツ発信を続けることで顧客と接点を持ちつつ、購入やリピートにつなげること。
また、プル型メディアにもかかわらず、SEO対策(自社サイトの検索結果を上位に表示する施策)を施すことで、見込み客を集める集客ツールにもなります。ただし、成果を出すためには運用・コンテンツ制作両面で専門的な知見が必要です。
おわりに
ダイレクトマーケティングは、顧客一人ひとりに合わせてきめ細やかにアプローチ/対応することで、見込み客の獲得から顧客育成までを両立しておこなうことが可能なマーケティング手法です。施策に対する顧客の反応を定量的に測定/データ化できるのが特徴で、結果を検証して改善していくことが成功のカギになります。
インターネットの普及により情報量が増大かつ多様化したことで、ダイレクトマーケティングの特徴であるターゲティングやピンポイントに響くOne to one のメッセージは、今後ますます重要になってくるでしょう。
今回紹介したのは、あくまで基本的な仕組みです。実際に実施して成果をあげるためには、顧客リストの活用法、広告・DMのコピーライティングやデザインテクニック、発送コスト削減策など、学ぶべきノウハウは沢山あります。この記事を読んでダイレクトマーケティングについてもっと知りたいと思われた方は、ぜひ「教えて!DM先生」の他の記事もご覧ください。
ダイレクトマーケティングとは?
教えて!DM先生 編集部
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